よしなしごと。

もくじ


通巻178号・2003年10月29日(水)
ICOCAでイクノ?(前編)

11月1日から, JR西日本が大阪周辺で「ICOCA」という新しいシステムを始めます.

そもそも, IC Operating CArd などという苦し紛れの英訳をつける必要はないと思うのですが, せっかくなのでまとめておきます. もちろん, 公式ページの解説文書をそのまま載せても仕方がないので, 私なりの解釈で参ります.

JスルーカードICOCA
登場時期1999年2月2003年11月
利用範囲JR西日本の関西エリア・
近鉄電車の関西エリア・
伊丹市バス・明石市バス・近鉄バス
JR西日本の関西エリアのみ.
これから拡大していく予定.
改札機財布から出して投入する.
いちいちきっぷを買わなくてよいのがウリ.
左記に加えて, 定期入れから出さずに「触れるだけ」で通れるのがウリ.
支払い方式プリペイド(前払い).
残高は減る一方.
追加はできず, 次のカードを購入する.
プリペイド.
残高の追加が可能.
2枚以上持つことはできず, 同じカードを使い続けるのが前提.
システム磁気カード.
残高等の情報がカードに書き込まれている.
テレホンカードでは偽造が大問題になった.
ICカード.
カードが持っているのは番号情報で, 残高等はホストコンピュータに記録されている.
偽造は磁気カードより数段困難だし, そもそもまったく同じ番号のカードを作ってもホストコンピュータに記録された残高が増えるわけではないので無意味.
利用情報利用日時・駅・残高等がカード裏面に印刷されている.カードには表示されないが, 券売機等で確認・印刷できる.
代金割引等はない. カード制作費はJR負担だが, きっぷ発行費がJR負担なのと同じ.あくまでカードの所有権はJR西日本にあり, 借りるには500円が必要.
(デポジットと呼ばれ, カードを返却すると500円返してくれる)
払い戻し一切不可.可. 手数料210円を引いてデポジット500円を加えた額が返ってくる.
残高が210円以下の場合は, デポジット500円のみ返却.

プリペイドカードの機能だけではなく, ICOCAならではの新機能も紹介しないわけにはいきません.

定期券ICOCA定期券
登場時期?????2003年11月
利用範囲非常に広い.
私鉄等との連絡定期券も多彩.
JR西日本の関西エリアのみ.
連絡定期券は不可. 将来はICOCAを導入した他社との連絡定期券は発売されるはず.
改札機財布から出して投入.「タッチしていこか」がキャッチフレーズ.
システム磁気カード.ICカードで, 上記ICOCAと同一カードで利用可能なのがウリ.
定期券の区間外まで乗れば, 自動的に乗り越し分の残高が減る.
利用情報キセル防止のため「改札を入った」情報1回分だけは記録されている.公式発表はない. 上記の利用情報の確認では, 定期券の区間内のみの利用の記録は出てこないことになっている.
代金これまでの定期券と同じだが, 最初のみデポジット500円が必要.
なくした!!親切な人が届けてくれるのを待つ.
ダメなら, 泣きながら新しい定期券を購入.
改札機がホストコンピュータと通信しているので, そのカードを無効にすることができる.
手数料500円を払えば, もとの定期券と同一内容で再発行することが可能.
ただし, 新たにデポジット500円を取られる. 前のカードが見つかれば, それを返却すれば500円返ってくる.

というわけで, ここまでが普通のご紹介でございました. 通巻179号に続く.


通巻179号・2003年11月4日(火)
ICOCAでイクノ?(中編)

「券面で残額を確認できない」

という意見がある掲示板に書かれていました. その人は「ICOCA定期券として利用する際には表面の印刷の書き替えができるのだから, 表面に残額を表示しろ」と言っていましたが, 財布に入れたまま印刷を書き替えるなんて無茶すぎます.

Suicaとの関係

先にJR東日本が導入している SUICA と ICOCA はほぼ同じシステムですが, ホストコンピュータ同士が連携していないため相互利用は不可能です. しかし, 当然 SUICA もセンサーに反応するため, 両方入った財布を改札機にタッチしても通れません. 実験した人のレポートもあります.

将来的には共通利用できるようにしたい, と言っていますが, どうして最初からしないのだろう…

デポジット500円

そもそも複数枚所持を想定していないシステムですから. いろいろな柄のカードをコレクションしたい, という人には向いていません.

私はどんなカードでも使いきって取っておく主義なので, 手元に置くには500円が必要なカードなど集めません.


…どれも本論ではありません. 特に3つ目はギャグのつもりです. 次回に続きます.


通巻180号・2003年12月3日(水)
ICOCAでイクノ?(後編)

非常に間隔が開いてしまいました.

「財布から出さなくてよい」こと自体がマイナス要因。

これまでの磁気式のきっぷは, 改札機と接触して初めて磁気情報を読むことができましたが, ICOCAは接触する必要はありません.

本来は, 「財布に入れたままタッチする」ではなく「持って改札機を歩いて通る」だけで動作できるようにしようとしたそうですが, 誤動作が多いと使いものになりませんね. 「改札機にかざす」方式でもダメだったと, メーカー自身が認めています.

そこで, こんなカバンが実際に作られているわけです. 「カバンごと改札機にかざせば通れるなんて, あぁ便利。」といいたいところですが, 実際はまったく逆です.

Suica や ICOCA はソニー(株)の開発したfelicaというシステムを利用している, というのは堂々と発表されていることです. このこと自体は別に問題がないのですが, ソニーはクリエという携帯端末(進化した電子手帳とでも言うべきもの?)を発売しています. リンク先のカタログの機能紹介で謳っているように,

この端末で,Suicaの残高・利用履歴が確認できます。

通巻178号(前編)でICOCAの特徴として「カードが持っているのは番号情報で, 残高等はホストコンピュータに記録されている」と書きましたが, 実は残高や利用記録はカード自身にも記録されており, しかも市販商品で誰でも読み取ることができるのです.

私が知る限り, JR西日本はこのことをまったく説明していません. 「もし, あなたの背後にストーカーがいたら」ということは, ぜひ考えていただきたいところです.

私が実験したわけではありませんが, 実際に読み取るには, 今のところカードと端末を1cmくらいまで近づけないといけないそうです. とはいえ, 満員電車を想像して頂ければ……

「スタンプカード」と「ポイントカード」の違い。

「この店で○○円お買い上げごとに, 台紙にスタンプを1つ押します. 台紙一杯になったら景品をプレゼント(もしくは割引)」というのが, 昔からお得意さまサービスの定番でした. 今では「毎回お買い上げの際にポイントカードをご提示ください. ポイントが溜まったら……」が主流ですが, この2つの間には明確な違いがあります.

誰がいつ何を買ったかの記録が残るのです。

偽装牛肉騒ぎの際に, ポイントカードを使って買った人のみ返金する旨連絡したスーパーがあったそうです. そういう有効(?)活用はむしろ例外的で, もちろんそのデータはさらなる売り込みの材料になるわけですね. 実際私も, 電器店で割引を受けるため, もしくは延長保証を契約するためにポイントカードを持っていますから, それを否定はしませんが, 特典と引き替えに情報を売っているという感覚は忘れてはならないと思います.

えーと, 何の話でしたっけ. そうそう, ICOCA を使うということは, 自分が毎日何時にどこからどこまでJRを利用する, という情報を売ることに他なりません. ふつうの ICOCA の場合なら番号との対応だけですが, ICOCA 定期券だと(少なくともJRは)個人が特定できていることは考えておく必要があるでしょう. この情報を売ることと引き替えに得られる特典は, 「カードを財布から出さずにタッチしてICOCA」だけです. びた一文安くはなっていません.

蛇足ですが, 捜査令状があれば警察はこの情報を入手できるでしょうね. 間違っても, ICOCAを使って逃げてはいけません(笑)

個人情報保護と言われますが。

磁気式の定期券を買うとき, みどりの窓口での端末操作を見ていると, 名前と年齢・性別, それに連絡先電話番号を打ち込んでいるので, その情報は定期券に記録されていると考えてよいでしょう. 実際, 名前と年齢・性別は表面にも書いてありますし, 電話番号は万が一拾われた際に連絡するのに便利かもしれません. 申し込み用紙には住所等も書きますが, これは打ち込んでいる様子はないので, 駅で保管するか, もしくはどこかにまとめて保管されるのでしょう. (私は社員じゃないのであくまで想像ですが.)

では, ICOCA定期券だとどうなのか, という話になります. もし磁気式と同じように, ICOCA定期券に氏名・電話番号等の情報が入っていると仮定すれば, 先ほどのクリエで読み込めるのではないかという疑問が生じます. 「券面表示を目視する/接触してデータを読む」ことと, 「接触せずにデータを読むことが可能である」ことの差が本質的になってくるわけです.

もちろん, クリエに最初からついている機能で表示されるわけはないでしょうが, 「改造すれば可能」かもしれませんし, その改造の困難度も不明です. そもそも, ICOCA定期券にどんな情報が入っているかを確認する術すら,私にはありません。

情報漏洩を防ぐ基本。

最近, 「顧客情報が外部に漏洩した」という類のニュースが増えていますが, 情報漏洩を防ぐいちばん簡単な方法は, 情報の拡散を防ぐことです. すなわち, その情報に触れられる人間を限定することです.

駅でもらってきた「ICOCA ガイドブック」によると,

“ICOCA定期券”の紛失再発行

万が一“ICOCA定期券”を紛失された場合は, 再発行することができます. ご利用可能エリアの駅の「みどりの窓口」または改札口駅員にお申し出ください. お申し出によりカードの使用停止手配を行い, 使用停止完了となった時点での定期券情報とカード残額により, 新しいカードに再発行いたします.

※再発行の際に, 再発行手数料500円とデポジット500円, 計1000円をお支払いいただきます.
※再発行カードのお受け取りは, お申し出日の翌日以降となりますので, あらかじめご了承ください. (略)
※再発行カードは, ご利用可能エリアの駅の「みどりの窓口」でお受け取りください. お申し出の駅とは異なる駅でもお受け取りいただけます.
※お申し出, お受け取りの際には公的証明書のご提示が必要となります. なお, お申し出の際には所定の申込書にご記入いただきます.
(略)
※“ICOCA定期券”の新規ご購入時, 継続ご購入時等にご記入いただいた「ICOCA定期券購入申込書」のお名前, 生年月日, 性別等が誤っていた場合, 紛失再発行サービスのお取り扱いができなくなることがあります.(略)

紛失した場合の届出や, 再発行はどこの駅でもできるそうです. そりゃあ, 「発行駅に限る」なんて制限をつけたら不便ですし, そもそも発行駅を覚えていない人も多いでしょう.

しかし, それを実現するためには, 申し出た人のカードの番号を調べるための仕組みが必要になります. 申し出た人が覚えている情報から利用していたカードの番号を調べ, さらに名前・生年月日・性別等を公的証明書と比較して間違いないかどうかを確認するにはどうすればよいでしょうか?

そのためには, カード番号と個人情報を対応させたデータベースを作って検索することになりますが, そのデータベースを参照する権限を持っている人はどれくらいいるのでしょうか?

などといろいろ想像できますが, 万が一最後の仮説が正しければ, どこか1つの駅の1人の駅員にコネを作れば誰の情報でも調べ放題ということになります. 「発行駅に行って調べないといけない」場合と比較すると, 危険性は桁違いだといえるでしょう.

しつこいようですが, あくまで仮説です. 「このような危険性が存在する可能性がある」ということです.

謎の番号。

ふたたび「ICOCA ガイドブック」より:

“ICOCA定期券”をお求めの際には(中略)「ICOCA定期券購入申込書」の「カード確認番号」へのご記入をお願いいたします. 「カード確認番号」とは, 紛失再発行のお取り扱いを行う際, カードの特定を容易にする番号です. 任意の4桁の数字をご記入ください. (この番号をお忘れになられた場合でも, 紛失再発行のお取り扱いは可能です.)

ひょっとして, 申込書がこの番号別に保管されていて, 番号を忘れた場合はすべての申込書の中から係の人が探すとでもいうのでしょうか? それなら, 前項の記述はすべて杞憂に終わるわけですが…

しかし, 「4桁の数字を書け。その数字は覚えておくように」と言われたら, 反射的にキャッシュカードの暗証番号を書いてしまう人が多いのではないでしょうか? これまでに見てきたように, この申込書に記載した個人情報がどう扱われるかはまったく不明ですから, これは非常に危険なことです.

万が一暗証番号を書いてしまった方は,
早急に変更することをお勧めします。

もちろん, 変更すべきはキャッシュカードの暗証番号の方です.

まとめ。

どんなことにも, メリットとデメリットがあるのは当然のことです. たとえば,

などと比較した上で, 自分にとって有利だと思われる「○○銀行に預金する」という選択をすることになります.

この ICOCA というシステムに関しても, やはり同じです. 自分にとってのメリットとデメリットを比較して, 自分にとって有利な選択をすればよいのであって, 決してJR西日本の営業妨害を意図しているわけではありません.

ただ, 推進する側は当然メリットしか言わないわけで, 判断するための情報を提供するという意図で今回公開しました. 以上のことを考慮した結果, 私は当面 ICOCA を所持しません.

この件に関するご意見・ご感想等をぜひお聞かせください. ほぼ休眠状態の掲示板「えがおをみせて。」もしくはminarai@nnn.ac 宛メールでお願いします.


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