みならい, 一家の旅・第4回
〜波乱だらけの最終日〜

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前回までのあらすじ.

1泊2日の旅の1日目に3回をかけてしまったので, 2日目は疲れて早々に終わる……のか?!


「朝の散歩に行かないか?」という両親の声で目が覚めた. 家族旅行にふさわしい, なんと優雅な朝だろう. ただ, 時刻が朝5時であることを除けば.

妹と眠い目をこすりながらとりあえず出かける支度をして, また砂漠へと足を踏み入れる. 実は, 両親が泊まりがけで出かけたときは早朝の散歩はお決まりのパターンとなっているらしい. それなら寝る前にそう言っておいてくれれば心の準備ができたのにぃ.

こんな朝早くに砂漠を散歩する物好きはほとんどいない. 昨日あれだけたくさんあった足跡は, 夜の間に風がすべて消してしまったらしく, 風紋が一面に広がっている. その美しさを堪能するが, 決して振り返ってはいけない. だって, 自分たちの足跡で風紋が消されているから.

前回書いたようにラクダには乗れないので, 砂漠の一隅に馬車乗り場がある. もちろんこんな時間に馬車が営業しているわけもないので, 馬車に乗ったつもりで轍をたどる. 馬と車が踏み固めているぶん, ほかより歩きよい.

昨日登った馬背を見ながら馬車4人(?)が進んでいくと, 突然目の前に海が広がった. その辺りが広くなっているので, 馬車はここまで来てしばらく休憩するのだろう. それから馬車道は森の中に入っていき, しばらく森林浴をしていると唐突に駐車場の脇に出て, 馬車一周コースは終わった. 客車が何台か留置してあったが, 馬小屋はなかったのでどこかから御者と馬が出勤してくるに違いない.

帰りは舗装された道をたどって宿に戻る. 一周約2時間. 希望者はまた露天風呂で砂を洗い落としたら, もう朝食の時間である.


可もなく不可もない模範的な「旅館の朝食」をとっていると, 突然雨が降り出した. こうなっては砂漠に足を踏み入れるのは大変だ. 我々は昨日と今朝でもう満足したからいいのだが, 「ほら, 早起きしてよかっただろ?」と言わんばかりの両親の視線が……

というわけで, 今日は雨の中, ガイドブックによる模範的な鳥取市内観光. お昼はニュー砂丘荘のおじさんお勧めの蕎麦屋さん. 出石蕎麦の店である.

出石蕎麦というのは, 兵庫県出石郡出石町での蕎麦の食べ方で, 要するにざるそばのざるの代わりに陶器の小さなお皿に盛り付ける. この店では「1人前5皿で500円」という手頃な値段だ. 店の壁に所狭しといろいろな色紙が貼り付けてあるのは私の趣味には合わないけれど……

ところが, 注文を取りに来たおばさん曰く

「男の人はだいたい3人前, 女の人
  でも2人前くらいは食べますね」

私はこの言葉を聞いた瞬間, キレた. それは1人前とは言わないだろう.

結局父が6人前を注文したら, おばはんは「あとで追加注文されても, ゆがくのにはかなり時間がかかりますからね」と捨てぜりふを残してしぶしぶ奥に消えた.

待つことしばし. いや, けっこう長い時間が過ぎた. おばはんがまず大きな徳利を持ってきた. つゆが入っているのである. それから, 薬味と器を4人分.

薬味は6皿持ってくるのがスジではないかと思うが, キレた私は黙っていた.

続いて, でっかいお盆の上にお皿を満載して運んできた. さほど広くない机は皿で埋まってしまったが, 30枚の皿はまだ10枚ほど残っている. どうするのかと見ていたら, 躊躇せずに皿の上に皿を重ねていくのであった. 「はい, これで6人前30皿です」と言われたときにはもう数える気力も残っておらず(笑), 我々は黙々と蕎麦を食べ始めたのであった. 蕎麦は確かにおいしいのだが,

私が5皿しか食べなかったことは言うまでもないだろう.

店を出てからそういう不満をぶちまけながら, 午後からも模範的な鳥取市内観光. ただ, ガイドブックのモデルコースでは鳥取市内と砂丘をセットにして1日コースになっていたので, かなりゆったりとした観光となった.

お茶にしようと入った某ホテルの喫茶室でまた不可解なことがあったんだけど, 書くのは止めておこう.

帰りの足は鳥取駅 17:35 発の大阪行高速バス. ある意味中途半端な時間である. 大阪に着いてから夕食をとるにはちょっと遅いし, 乗る前に夕食をとるとちょっと早い. しかし, もう見て回るところもないから夕食にしようか, と鳥取駅前の居酒屋のような店に入ったのが 16:25 であった. よもやこれが大騒ぎの元凶とは.


この店, メニューは居酒屋っぽいのだが, 主立ったメニューにはごはんと味噌汁と一品のついた「定食」があって, 夜でも定食はできるという.

4人が思い思いのものを頼んだ. 私は「ふぐちり定食」で, 1人用の鍋とごはん, おかずがついて900円くらい.

店は空いていて, 何組か乾杯を始めているグループがいる程度なのに, 待てどくらせど注文の品は来ない. 当然のことながら, 乾杯のビールとかはすぐ運ばれてきている. 17:00 になっても音沙汰がないので「バスの時間があるので」と催促をすると, 店員曰く

そんなことはもっと早く言ってくださいよぉ!

いや, そんなに待たされるとは思ってないですがな.


17:05 に妹の注文の品が運ばれてきたのを皮切りに, 17:10 頃に注文の品がすべて揃った. バスは電話予約してあるけれどきっぷはまだ発券されておらず, 「出発の10分前までに駅前のターミナルでご購入ください」とのことだったので, 要するに10分ほどで食べる必要があるのだ.

私のお盆の上には, ごはんと漬物, それから芋の煮物と肝心の鍋が載っている. ん?

ポン酢 (というか取るための器) がない!

私の注文したのはふぐちりで, 鍋自体に味はついていないのだ. どうやって食べろというのだ.

別のテーブルに料理を運んできたおねえさんに催促してごはんとおかずから食べ始めたのだが, 5分経っても来ない. 仕方がないので, 私は煮物を食べ終わった器に, テーブルにあった醤油をたらして猛然とふぐを食べ始めた.

なんとか5分ほどで食べ終えたのだが, さすがにふぐの味は覚えていない. 当てつけにお盆の上に醤油を置いたまま, 席を立ち, 父が会計をしている間に私はバスターミナルまでダッシュ. なんとかバスに間に合ったのでありました.

出てきた指定券には「10号車」と書いてあったのでギョッとしたけれど, なぜか「10号車」と「11号車」の2台で運行されていた. なぜ「1号車」と「2号車」でないのかはわからない.

鳥取市内を出るまでは少々渋滞に巻き込まれたものの, それからは快調に走る. いつか来た上石井のあたりを通ったはずだけれど, (みならい, 智頭急行初乗りの旅を参照. 同じ道を走っているけれど停まるのは姫路行きだけ) 疲れていたのと, 朝が早かったせいで熟睡していて, 記憶がない.

そんなこんなで無事大阪に帰ってきたけれど, つくづく食べ物に見離された2日目だったと思ったのでございました. あまりに長くかかりすぎた「みならい, 一家の旅」, これにて完. ご静聴ありがとうございました.


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