みならい, 一家の旅・第3回
〜旅のラクダは?!〜

↑紀行文倉庫(その1)へ
←第2回 〜月の砂漠をはるばると〜 へ


前回までのあらすじ.

鳥取砂丘をはるばると歩いて, 靴の中を砂だらけにした物好き4名は, ニュー砂丘荘といういかにも一昔前のような名の宿にチェックインしたのであった.


我々の部屋は特別和室である. 何が特別か, というと, なんと

部屋の中に露天風呂がある

のだという. 確かに, ベランダに1人用の桧の浴槽が据え付けてあって, フロントのおじさんに教えられたようにバルブをひねると, お湯が浴槽にたまり始めた. なにしろ全員砂を落としたいのでとっとと入ることにしたのである.

「ニュー砂丘荘」という名前を聞いてなんか古そうな建物を想像していた私だが, 実際は非常に新しかった. 建物が完全バリアフリーなのである. 確かに, 廊下にも部屋にも段差がまったくない. 建築学科の妹が目を輝かせていたとかいないとか.

となると, 桧の浴槽もバリアフリーである. リフトがついていて(もちろん座る部分は桧), ボタンひとつで上下するのだ. ただし,

リフトの座面の分, 風呂が浅くなってしまう

のが玉に疵. しかも, バルブを開けておいても, お湯はなぜか浴槽の八分目で自動的に止まってしまうのである. となると, もちろん

止まるカラクリを見つけて, なみなみとお湯を張る

のが私なんですね, はい.


この旅行の目的は, 4人とも「鳥取砂丘を見てみたい」はずだったのだが, 実はみんなもっと具体的な目的をもっていて, それは微妙に違っていたのである. 「誰も踏んづけていない風紋を見てみたい」という目的は叶ったし, 「砂丘をみながら露天風呂に浸かる」という目的も叶ったのであります.

しかしながら, 私の目的が叶わない. 別に無茶な計画をしてきたわけではありませぬ. 単に

砂漠を歩くラクダを見てみたい

というひとことなのでありますが.

ガイドブックには「ラクダと一緒に記念撮影ができる」と書いてあります. ラクダは貴重なので乗馬のように乗せて歩いてくれるわけではないようです.

それでも, 「砂漠を背に佇むラクダ」という絵本に載っているような光景を見れればそれでいいやと思って来たのに,

ラクダの姿がどこにもない

のでございました. 正確に言えば, さきほど通った人の多いところに「ラクダに乗るための足場」はあったので, 夏しか営業しないのでしょうか?!


夕飯に, 肉のタタキが出てまいりました. パンフレットに「特別料理・ダチョウのステーキなど」と書いてあったので, ダチョウなんでしょう. 鳥取砂丘にラクダはいないけれど, ダチョウならいる……って, ダチョウは砂漠に住んでたっけ?!

と不思議に思って, おじさんに聞いてみると

いやあ, このへんは寒いのでダチョウは育ちませんねぇ. 沖縄の農家と契約して送ってもらってるんですよ.

う゛. あまりのショックに早々に床についたところで次回に続く.


→第4回 〜波乱だらけの最終日〜 へ
↑紀行文倉庫(その1)へ


minarai@nnn.ac