最近父がよく鳥取(正確には鳥取県倉吉市)へ出張しているのだが, ほとんど日帰り, たまに一泊二日で観光する余裕なんかほとんどない. という話をしていたら, 家族4人が揃いに揃って鳥取を観光したことがないということが発覚, 特に4人とも口を揃えて
ということで, 4人の予定をなんとか合わせて(実はボトルネックは私だったりする. ほかの4人は土日は休みだが, 私は通常土曜日に授業があるし, 春期講習ともなればまったく不規則になるわけで)出かけることになったのである.
図書館でガイドブックを借りてきて, 各自がチェックして行きたいところを箇条書きにする. もちろん, それをまとめるのは私の役目である. 「鳥取砂丘を見てみたい」という4人の言葉には微妙な4種類のニュアンスがあったのだが, それは後に発覚するのである.
いつも父が使っている特急「スーパーはくと1号」は京都始発の倉吉行きで, 大阪駅は 7:37. 朝はちょっと早いがこれに乗れば10時過ぎには鳥取駅に着くのだから, 思ったよりも近い.
智頭急行初乗りの旅みたいに普通列車だけで行くのに慣れた身には, 鳥取は果てしもなく遠いところというイメージがあるのだが……
2000年3月19日土曜日, 6時半ごろ家を出て, 途中コンビニで朝食を調達. 私以外の3人はおにぎりをいくつか買ったのだが, 私は夜行明けの朝食として松屋のハンバーグ定食を平らげたりする人間なのでお弁当(といっても, 揚げ物はほとんど入っていないヘルシー弁当)を買う.
大阪駅でスーパーはくと1号を出迎える. 父はいつも自由席だというし, 一番前の席は展望がよいのだが, 念のためと買っておいた指定券は一番後ろの5号車. 不運だと思っていたのだが, 実は月曜日が祝日だから3連休の初日で, 自由席は通路までいっぱいだったらしい.
そんなこんなで「空いていたら先頭で景色を堪能する」というもくろみは失敗に終わったが, 運転台にカメラがついていて, 各車両のテレビに前面展望が写し出される仕組みになっているのであった.
ただ, テレビ越しに見る前面展望と, 窓から見える側面展望の間には時間のずれが生じる. たとえば, テレビで対向列車とすれ違ってから数秒後にその列車が窓に現れるわけで, 何となく気持ち悪い.
列車は三ノ宮, 神戸, 明石, 姫路, 上郡と停まり, 智頭急行線に入る.
当然のことながら新快速と比べて停車駅は少ない. 新幹線は停まるのに我らが特急は停まらない駅があることは公然の秘密である.
期せずしてちょうど半年ぶりの訪問となるわけだが, 今回は全線に乗車できることが決まっているから幸せである.
「スーパーはくと」で智頭急行線に乗ることも, 砂丘と同じくらい重要な私の目的であったことは, これまた公然の秘密である. だって高いんだもん(笑)
車窓から石井駅を眺めようとするが, 時速100キロ以上で走る列車の中からたった2両分のホームを見つけるのはけっこう難しい. そういうときは前面展望テレビが役に立ち, 見覚えのある景色に続いて2両分のホームがテレビに映り, その数秒後に左側の窓を駆け抜けていった. ここから先が私の未体験ゾーン(というのは大袈裟かな)であるが, 兵庫と岡山の県境の長いトンネルに入り, 大原町をあっさり通りすぎて鳥取県に入り智頭に到着.
ここまで文字通りウサギのような走りっぷりだった「スーパーはくと」も, ここからはカメに変身する. 山陽本線はもちろんのこと, 智頭急行線も高速走行を前提に設計された路線なのだが, ここから先の因美線はローカル線. 急カーブも多いし路盤も弱いのでスピードを出すことができないのである.
少しうとうとして, 気付けば鳥取到着のアナウンス. 鳥取ではすぐの連絡で山陰本線上り浜坂行きに接続するので, ホームの階段を走って降り昇り(日本語が変だけど, 高架駅だから降りたあと昇ったのだ)したのだが, 米子からの快速列車が遅れているので接続待ち. 単線なので「スーパーはくと」も出発できず, 向かいのホームでいらいらしながら(推測)待っている.
幸い3分ほどの遅れで快速列車が到着, 我らが普通列車は発車. 岩見駅に10:39ごろ到着. 急いで駅前広場に出る.
10:40 発のバスに乗る予定だったのだが, バスがいない. このプランを立てたときには「絶妙の接続だな」と思ったのだけれど, あまりに都合のよいプランはしばしばこういうトラブルに巻き込まれるんだよなぁ.
しかし, 確かに 10:40 までに少なくとも駅前広場を見渡せるところにいたのに, バスのお尻さえ見てないのはおかしい……と思っていたら, 案の定3分ほどしてどこからともなく「田後」と書いたバスがやってきた.
ふっ, よくある話さ. というわけで無事バスに乗る. 時刻表やガイドブックで「たご」だと信じて疑わなかったこのバスは「たじり」行きであった. ふっ, よくある話さ.
海岸に出たところは砂浜の海水浴場だったけれど, 3月の午前中となれば誰も泳いでいるはずもなく. そこから3分ほどで田後の漁港, 終点に着いた. もちろん砂浜ではなく, 入り組んだ海岸の入り江であった.
港を一望する展望台から日本海の眺めを堪能する. もう春のポカポカ陽気で海は凪いでいた. 先週は天気予報によると雪が降ったそうだし, 明日は雨の予報だから運がいい.
ここから海岸に沿って, しばらく遊歩道を歩くことになった. がしかーし.
を侮ってはいけない. そう, 田後港から西はリアス式海岸で, 非常に入り組んでいるのである. 道は左右にうねるだけでなく, 上下にもうねっていてちっとも進まない. 疲れてきたし, 眺めはよいけど大した変化もないので車道に戻る. 車道では700メートル程度の距離をたぶん3倍くらいに引き延ばしてあったのではないかと.
そこからは車道を歩き, 昼ごろに次の集落, 網代に到着. 観光バス御用達のような食堂で昼食とする. 外にメニューが書いておらず, 私1人なら入りづらい店だったのだけれど, 入ってみれば大当たりの店であった.
甘海老のかき揚げ丼, イカの天ぷら丼, 海鮮鍋焼きうどんなど, リーズナブルな値段でおいしい. いろいろ注文して分けて食べるというのは1人旅ではできないことだ. ちなみに, どれも分量がかなり多くて, 1人で2品食べるのは厳しいわけで.
満腹になってしまったところで次回に続く.
→第2回 〜月の砂漠をはるばると〜 へ
↑紀行文倉庫(その1)へ