←第1回 〜和歌山から大垣まで〜 へ
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1999年8月26日木曜日,天気小雨。(昼間は晴れだったが,夜になって小雨) 20:31に大垣駅についてとにかく臨時列車東京行きを待つ人々の列に加わった私を待っていたものは。
すぐ,私の後ろに大学生くらいの男女2人組が並んだ。後ろ,とはいってもみんな思い思いの方向を向いて座っているので(私は横を向いて座っていた)彼らは視界に入っていたのだが,女性の方はなんと
夜行列車にミニスカート。これは非常に勇気ある行動である。通勤電車で座って居眠りしているおねーさんを見てもそれは容易に想像がつきますよね?!男の方はやけに薄っぺらいかばんを持っていて,おもむろにそれをホームに置いてその上にどかっと座った。そうすると,女の方はその前に膝を立てて座って,男にもたれ掛かったのである。
どういう状態になったのか,多くは語るまい。しばらくして,女はその状態がよろしくないと気付いたのだろう。かばんの中からジーパンを取り出した。やっと気付いたかと思ったのも束の間,彼女は
ミニスカートからジーパンへは,確かに[ピー]を見せずにはき替えることが可能ではある。がしかし。女性しかいない更衣室でさえそうやってはき替えるのに,何ゆえに衆人環視のホームではき替えるのか。まったくもって理解不可能である。
私は買い出しに出かけることにした。大垣駅は南側の方が人通りが多いのだが,なぜかコンビニはない。北側は人通りは少ないが,ちゃんとコンビニが存在する。と言うわけで改札を出て,北側のコンビニで夕食を調達した。ついでに改札口で,青春18きっぷに明日の日付を入れてもらった。夜行列車に乗る場合は車内改札のときに日付を入れてもらうことが多いが,実は「乗車前に日付を入れてもらう」のが原則であることを知らない人は多い。(先の日付は入れられない,などという駅員がいるが,それは大嘘。)
ホームに戻ってみると,列は少し伸びていた。そこに3人連れのおばさんがやってきた。やかましく喋りながら周りの人に「ここが東京行きの行列か」などと聞いている。私としてはこの方々が同じ行列に加わるのはご遠慮いただきたいと思ったが,結局同じ列に加わって,レジャーシートを敷いて宴会を始めておられた。持ち寄った弁当にビール。さっきのカップルもビールを買ってきて飲み始めていたのだが,早速おつまみをもらったり,あげくの果てに「食べきれないほど作ってきたから持っていって」と寿司折りをもらっている。
そんなこんなでにぎやかな宴の横で時間は過ぎ,名古屋方面から本日お世話になる167系の8両編成が回送されてきた。しかし,5番線には22:41発の豊橋行きが停まっているので,いったん行きすぎて方向転換するのである。さあ,豊橋行きも出発する時間となり,いよいよ席取りの勝負の時間が近づいてきた。
私は宴の途中のおばさんたちに「そろそろ入ってくるから片づけた方がいいですよ」と声をかけた。それはもちろん,おばさんたちのせいで列の後ろの人たちが迷惑を被るおそれがあったからなのだが,おばさんたちは親切な若者だと感謝していた。ま,なんでもいいけどこのおばさんたちととなりのボックスにでもなった夜には安眠の保証はないだろう。
いざ列車が入ってきて,私は前から5両目の中程,進行方向左側のボックスを確保してさっさと洗面を済ませた。駅で洗面しようとすればトイレを使うしかないけれど,車内なら洗面台がついている。発車時間までに洗面台を使う人などそうそういないのでお勧めである。おばさんたちは車端に近いところに座っている。これならよく眠れそうである。ちなみに先ほどのカップルは車端部の2人掛けの席(この列車では進行方向と逆向き)に陣取ったようだ。お幸せに。
進行方向右側は他の列車とすれ違う度に音がします。熟睡したいときは進行方向左側に座りましょう。
発車まぎわになって,同じボックスに一人の若者が座った。彼はまったく荷物を持っていなかった。いや,正確にいえば,アダルトな雑誌を1冊だけ持っていたので,たぶん名古屋あたりで降りるのだろう。彼はその雑誌を広げながらうとうとしている。私もうとうとしたが,彼が降りた後にこのボックスに何人乗ってくるかが気になるのでまだ熟睡はしないことにした。
ところが,彼は前の席に足を投げ出して寝ている。このボックスに座るには彼の足をまたがなければいけない状態である。本当に混んでいるならともかく,各ボックス2〜3人掛けの現状ではわざわざ彼の足をまたぐ人はいない。そのうえ
実は彼は東京まで行くようで,彼のおかげで私のボックスは2人掛けの非常に快適な状態のまま一夜を過ごすことになったのである。万が一通路までいっぱいになるような事態であれば,「ムーンライトながら」のコンパートメント席に移るつもりだったのだが,それは杞憂に終わった。
さて,「ムーンライトながら」とこの臨時列車東京行きの関係は微妙で,大垣を出るのは臨時列車の方が先,名古屋で定期列車が追い抜いて,沼津でまた並ぶも定期列車が先に出る。(下りはもっと複雑である)
結局,熱海から先は定期列車の5分後に臨時列車が走ることになっているのだが,実はこの5分が案外意味を持ってくるのである。定期列車は4:34に品川に着くのだが,東海道線下りの始発は品川4:35発の沼津行き。いつも「ムーンライトながら」で上京すると品川駅でちょうど同じホームの向かい側に停まっているのだが,今日はこの下り始発に乗りたい。となると,5分後の臨時列車が品川に着く頃にはもう沼津行きは出たあと。私は仕方なく4:29の川崎で降りて,4:45に来る沼津行きを待った。こんな時間だというのにどこからともなく乗客が現れるのが,首都圏のすごいところである。
大阪ではそんな早い時間の電車に乗ったことないから,この記述はもしかしたら不適当かもしれない。
予定どおり睡眠のつづきをとって,6:33沼津着。41分発の島田行きに乗り換えて6:59,富士駅に到着。ここからJR東海管内で唯一乗ったことのない身延線に入る。次の身延線甲府行きの発車まで40分ほどあるから,朝食を調達する。
駅の周りをちょっと歩いたが,この時間に開いている店はミスタードーナツとミニストップ。ミスタードーナツではあまり「暖かい食事」が期待できないような気がしたので,ミニストップにした。ファーストフード様(さま,ではない)のものも売っているのがありがたい。
ホームに待っていたのはJR東海の最新鋭車両,313系の固定クロス車両だった。へーぇ,転換クロスだけじゃないんだ,と思いながら乗り込む。ちなみにドアは常に半自動扱いで,駅に着いたらドアボタンを押して乗り降りする方式。慣れるまでは面倒に思う人もいるかも知れないが,車内保温の観点から見てもよい。
富士からしばらくは富士山の西側を走るはずだから,目の前に雄大な富士山が……と思って進行方向右側に陣取ったのだが,あいにく曇っていることもあって富士山は見えない。西富士宮で反対列車行き違いのために3分ほど停まったので,ホームに降りて年輩の車掌さんに「富士山は見えないんですか?」と尋ねてみた。このひとことがこのあとの行程に多大な影響を与えるとは,もちろんこのときの私は思うべくもなかったのである。