みならいの放浪記 1999 弥生・第4回
〜山形から福島へ〜

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山形駅からやまがたユースホステルに向かう方法は2通り。ひとつはバスで行く方法,もうひとつは鉄道で行く方法。バスは16:50発の山形交通。いつ来るかわからないし,確か去年乗ったときに400円以上とられた覚えがあるので遠慮して,16:38の米沢行きに乗って1駅,蔵王で下車。小雨の中のんびりと30分ほど歩いてユースホステルに到着。電車の中で見たいかにも,という若者も先に到着していた。実は彼もそう思っていたらしいが,彼はカッパを着て早足で20分ほどで到着したそうだ。

今日の泊まり客は8名,うち夕食をとるのが6名とか。ユースホステルが何たるか理解していない3人組が泊まっていて,ペアレントさんは困っていた。

同室になった人の中に,東北大受験の帰りという子がいた。香川出身で,東北大を受験して,そのまま旅行をしているのだと。ところが,家に電話したら引っ越しで手が足りないから早く帰ってこい,と一喝されたので明日帰る,と。ところが,彼の立てたプランは仙山線で仙台へ,さらに東北本線を地道に東京まで出て,東京から700系のぞみで岡山へ。んで,「明日の23:30ごろに帰る」と家に電話したら,「何言ってる,もっと早く帰ってこい」とまた一喝されたという。彼と,明日仙台まで同行する約束をして就寝。

3月16日火曜日,晴れ。今日は山形9:19発の仙山線に乗るところから始まる。奥羽本線の本数も多くないから,蔵王8:41発の山形行きに乗ることになるが,ユースの前を8:41に出るバスに乗っても間に合うはずである。どちらにするか決めずに寝たのだが,朝起きたらけっこう遅い時間で,9種類のジャムの朝食をのんびりとっていると電車には間に合わなくなった。同じ時間とはいえ,駅までは徒歩30分ほど,バス停までは徒歩2分。

黒沢温泉バス停でバスを待つ,が,山形交通バスはまた来ない。今日はあまり遅れると困る。仙山線に乗り遅れるとすべての計画が崩れ去るのである。5分遅れで来たバスは,また渋滞に巻き込まれる。彼と2人で時計とにらめっこ。なんとか交差点を抜けて,ギリギリ間に合うかと思われた。

がしかーし。我々の眼前に立ちはだかったものは,道路清掃兼散水車。

狭い道で追い抜くこともままならず。もうそこに駅ビルが見えているので,発車9分前にとにかくバスを降りて駅まで走った。私の場合,今日は学割乗車券で移動する予定なので,なんとしても駅の窓口できっぷを買わねばならぬ。彼は仙台まで買えばいいので,券売機を使用。改札を通り抜け,階段を駆け降りてなんとか間に合った。山形交通のばかやろぅ。ぜぇぜぇぜぇ。

仙山線車内で,次に乗る「スーパーひたち30号」の自由席特急券を買おうとして一悶着。仙台行きの電車の中で仙台発の特急券を買うのに手間取るはずないと思っていたのに,車掌は端末をいじったあげく「しばらくお待ちください」と言ってどこかに行ってしまった。帰ってきて彼が言うことには「ここでは売れません」「は?」と聞き返すと,彼が事情を説明するに「特急料金には2種類あるんですよ。A特急料金とB特急料金。どちらかわからなくて,間違った券を売るわけにはいかないもので……」

ぉぃぉぃ。カバンの中から時刻表を取り出して,ピンクページを開けて「ほら,ごらんの通り。常磐線のB特適用は勝田以南だから,A特100キロ以内の1150円が正しい」と教えると,すぐに発券された。なんだかなぁ。そのくせ,連れの彼が「仙台→東京と東京→岡山の新幹線自由席」と注文すると,東海区間でさえ即座に発券できるんだけどなぁ。あ,そうそう。二喝された彼は結局,仙台から新幹線に乗ることにしたのだ。700系のぞみはやめて,ずっと自由席とのこと。

仙台駅に着き,彼と別れる。「スーパーひたち30号」はすでに入線しており,予想に反してかなり混んでいた。通路側の空きをなんとか見つけて座り,この旅唯一の特急を楽しむ。ただ,ビジネス客が多いので日射しを避けてみんなブラインドを下ろしてしまい,あまり眺めはよくなかった。

11:32,浪江に到着。次に乗るべきは13:00のJR東北バスで,それまでに昼食。街を一周して寿司屋が多いことに気付き,その中の1軒に入って握りずし定食を頼む。味は悪くなかったが,常連らしき先客も同じ定食を注文していたのに握りずしのネタが違ったのは気にくわない。

農協で非常用食料を買い込んで,バスに乗って出発。SWAさんと同じく,大柿簡易郵便局と津島郵便局を訪問する予定だが,彼のように12キロもの道のりを歩くのは遠慮したい。しかし,彼が書いていたように全線を走破するバスは非常に少ない。それでも,バスの時刻を紙に書いて通学の電車の中でじーっと眺めていた結果,もう少しまともな方法を思い付いたのでそれを実行に移すこととしたのだ。

バスははじめは平野を走っていたが,すぐに山の中を走るようになる。ただし,国道116号線をずっと走るからそんなに悪路ではなく,コンスタントに2車線確保されている。25分ほどで川房大柿着。思っていたほど山奥という感じではなく,それらしい建物もすぐ見つかったけれど,ここでは降りない。さらに25分くらい乗って津島郵便局前のバス停で降りる。

名前の通り,バス停の目の前にある郵便局に立ち寄って,バス停で待つこと10分ほど。14:08に浪江行きのバスが来る。そう,これに乗って川房大柿まで戻るのだ。バス代はかかるとはいえ,12キロ早歩きするよりはずっとよい。14:30ごろに川房大柿着。降車ボタンを押したら運転手が「降りるの?大柿で?」と驚いた。

バス停の目の前にあった元農協の建物が大柿簡易郵便局である。昔は農協が受託した簡易郵便局だったのだが,1999年2月末で農協が廃止になって,訪れた当時は「農協跡を利用した簡易郵便局」で,農協のおじさんが1人でポツンと座っていた。ちなみに,この日おじさんに聞いた話によると,近所の人で引き受け手が見つかって,今研修中とのこと。研修が終わったら同じ建物で引き継ぐとのことだが,この際に端末が入ってオンラインになるとのこと。3月末ころには,と言っていたので,もう代わったことだろう。

ちなみにSWAさんの日記に「こんな山奥でバスの乗り継ぎができて,そのバスの行き先は鉄道の通っていない葛尾村」と書いてあったからバス停を眺めてみると,

福島交通 発車時刻表 川房大柿  
 6:40 川房大柿止  
 6:42 落合経由天王平
 8:20 川房大柿止  
 8:22 葛尾     
16:38 川房大柿止  
16:40 葛尾     

こりゃ,乗るのだけじゃなくて見るのも大変だわ。

さっき降りたバスが戻ってくるのは16:14だから,散歩を楽しむ。オフラインというから山奥を想像していたのだが,いうほど山奥ではない。山深いのは事実だが,よく考えればここは「阿武隈高地」なんだった。山脈じゃないのね。浪江で買い込んだ非常食を,おやつがわりに食べる。

となりの矢具野というバス停まで歩き,16:19に来たバスに乗り,今度は終点の福島駅東口まで行く。降りたバス停から3歩歩いたところに次乗るバスの乗り場があったが,発車まで90分ほどあるので駅ビルで夕食とする。

食事を終えて,駅ビルを出るとすごい風。地元の人たちも大騒ぎしていたから珍しいことなのだろう。19:30ごろにバスがやって来た。福島交通のバスだった。最近高速バスによく乗るようになったけれど,

京都〜八王子 京阪バス・西東京バス共同運行 乗ったのは西東京バス。
枚方〜新宿 京阪バス・関東バス共同運行 乗ったのは2回とも関東バス。
福島〜上本町 近鉄バス・福島交通共同運行 乗ったのは福島バス。

てな具合で,ちっとも大阪の会社のバスが来ない。しくしく。バスの座席は前から2列目。出発直前に予約してこんな座席が出るということは,ガラガラじゃないのか……と思っていたら,実は9割ほど客が乗っていた。どうなっているのかはわからない。ひょっとすると,前の方は近鉄が販売し,後ろの方は福島交通が販売しているのかもしれない。

郡山駅前と須賀川営業所で客を乗せ,途中一度サービスエリアで休憩したあと消灯。東北自動車道・首都高速道路・東名自動車道・名神自動車道を通ったはずだが,熟睡していて記憶にない。短いながら波乱の最終日に続く。


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