みならいの放浪記 1999 如月・第6回
〜名鉄の迷路〜

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さて,13:07に(各)新岐阜に到着した著者であるが,路面電車の岐阜駅前〜徹明町間にまだ乗っていないので,そこを片づけてから次にかかろうと考えた。新岐阜駅前〜岐阜駅前間はすぐで,時刻表にも「徒歩5分」と書いてあるのだが,線路があるからには乗らなければいけないだろう。しかし時刻表に「道路事情により運転をとりやめることがあります」と書いてあるのが気にかかる。さっきまで乗っていた併用軌道は恐ろしく正確に運行していたから,そんなことはないと思うのだが。いや,思いたい。

新岐阜駅前でまんが雑誌を買って,岐阜駅前まで歩く。岐阜駅はすぐそこに見えていたのだが,すぐに向こうからやってくる路面電車とすれ違う。岐阜駅前の路面電車停留所へ行くためにはぐるーっと遠回りをしなければならず,迷いながら地下道を通ってやっとたどり着いた。

すると,発車時間の記載がない。ま,路面電車の時間は書いていないことが多いけれど,停留所に「新岐阜駅前〜岐阜駅前間は道路事情により運転を取りやめる場合があります。お急ぎの方は新岐阜駅前までお越しください」なんて書いてある。

10分待ち,15分待っても電車は来ない。まんがを買っていてよかった,という感じである。20分待ってしまうともう意地になって,これまで20分も来ていないんだからもうすぐ来るさ,てな感じになってしまう。結局,岐阜駅前をたった1人の乗客を乗せた路面電車が発車したのは13:44。このおかげで,せっかく2時間早く進んでいた予定を1時間食い潰してしまった。


今日の格言。

来るとわかっているものを待つのは2時間でもつらくないが,来るかどうかわからないものを待つのは30分でも苦痛である。


しかも,運転台を覗き込むと,なんと「10分延着新岐阜折り返し」と書いてある。要するに,新岐阜駅前〜岐阜駅前間は誰も乗らないと言っているようなものだ。

すぐ徹明町に着き,とりあえず岐阜市内線は制覇。また電車を待っているとどうなるかわかったもんじゃないので,歩いて新岐阜にもどる。その途中でお好み焼き屋を見つけ,朝から空腹を抱えていたことを思い出したのでモダン焼きを食べる。ただし,大阪でそうぞうするお好み焼きとは少々,いやかなり違った。

(各)新岐阜駅に戻って,今度は各務原線に乗る。先発は普通,次発は急行で,犬山には急行の方が早く着くから急行に乗るつもりだったのだが,急行は一般的な車両で,普通はパノラマカーだったから,もちろんパノラマカーを初体験することにする。

パノラマカーというのは,運転台が2階についていて,運転台のあるべき場所が客室になっている。前方展望がたいへんよろしい。ところが,運転手は車体側面のハシゴ(というより足場)をよっこいしょと登らないと運転台に入れないのだ。見ててかわいそう。逆に,車掌室がないから,車掌は客室の脇を柵で囲って車掌用の機材をおいたスペースに入って放送やドアの開け閉めを行う。これもかわいそう。

そのうえ,思っていたよりかなり田舎を走る電車は6両編成だけど,ホームの短い駅があって「次の駅では後ろ2両の扉は開きません」なんてことをよく放送していた。

三柿野で急行に追い抜かれる。しかし,となりのホームに移動しなければならず,そのための踏み切りは一番後ろにしかない。12両分を急いで移動して,なんとか急行に乗る。え?なぜ12両分かって?6両分バックして,踏み切りを渡って,また6両分進んだから。

新鵜沼に14:48に到着。ここから次の犬山遊園までの間に,世にも珍しい鉄道道路併用橋というものがある。どんなものかは漢字を見ればわかると思うが,路面電車でない鉄道が道路の真ん中を走るというのだ。ちなみに,鉄道は一律25キロメートル制限。たいてい警笛を鳴らしながら走る。

次の目的はモノレール。犬山遊園からモノレール線が出ている,ということは知っているのだが,哀しいかな,NATTには「省略」と書いてあるだけである。時刻が省略されているだけならまだ許そう。路線図まで省略されているのである。

というわけで,予備知識なく犬山遊園に降り立つと,モノレールはここから「遊園地」という駅まで走っていることがわかった。「遊園地」というのはどうやらモンキーパークのことらしい。30分間隔で運行で,発車まで10分ほど待たされる。やって来たのはほとんど遊園地の一部と化している車両。車体にはゾウとかキリンとかの絵。おじさんやおばさんたちと一緒に乗り込んで,いざ発車すると,「次は成田山」。犬山にも成田山があって,これまた交通安全に霊験あらたからしい。

その次が終点の遊園地で,駅の改札の向こう側はモンキーパークであった。これでは,この駅に降りたら遊園地の入場料を払わなければいけないのか。そんな理不尽な話はないだろうと思って駅員に聞くと,「そこの階段を降りていけば道路に出ます」と指さす。階段を降りていくと確かに道路に出たのだが,それからどうするかが最大の問題である。

あまりにうら寂しい場所なので,遊園地駅には戻りたくない。となれば,もう選択肢はない。成田山駅あたりまで歩いてもどる。ところが,モノレールはモンキーパークの中を走っていたが,そんな都合のよいところに道路があるわけがない。結局,かなりの遠回りを強いられて,今日2回目の小走りを経て成田山駅到着。参拝などする時間はなかった。

15:30に犬山遊園に戻ってきたが,次の列車は52分までない。ものすごく接続が悪い,というより,接続など考えてもいないのである。ホームの端から併用橋を見学することにする。ちょうど反対方向の列車とか回送とかが何本か来たので楽しめた。

ところで,名鉄には他にも名物がある。有名なのは,特急車両のミュージックホーン。片町線の車両も「ちゃらららちゃらら〜」と警笛を鳴らしながら走っているけど,こっちのほうが本格的。

ちゃ〜ら〜ら〜ちゃ〜ら〜ら〜ちゃ〜ら〜ら〜ら〜〜

てな感じなのだが(楽譜を書いたりしても仕方ないし)友人がこれに歌詞をつけていた。

どぉ〜け〜よ〜どぉ〜け〜よ〜こぉ〜ろ〜す〜ぞ〜〜

物騒だがぴったりだと思う。このモノレール寄り道は当初の予定には入っておらず,ここでまた1時間使ったので当初の計画通りの時間になった。次の犬山からさらに支線に入って探検する。まず御嵩行きに乗って,明智で八百津行きに乗り換え。なぜかレールバスだった。八百津ではすぐ折り返したのだが,帰りが最悪。電車の後ろ半分を女子高生の集団が陣取っていて,人を寄せ付けない。それでも強引に座ってもよかったのだが,まあ,私も大人だから補助椅子に座ってそっちを観察していた。まあ暴れる暴れる。その上うるさい。「乙女の恥じらい」なんて言葉は知らないんだろうか?

で,長〜い12分が終わって,明智からまた御嵩行きに乗り換えて,この辺制覇。御嵩からは普通豊橋行きに乗って折り返す。

これがまた名鉄の恐ろしいところで,この列車は犬山から急行に変わり,新名古屋を経て名古屋本線を豊橋まで走るというのだ。名鉄はこういう途中から支線に直通する電車が非常に多くて,路線図が頭に入っていないと目の前の電車がどこに行くのかも理解しがたい。

こんな電車が走っているのは今日は好都合で,17:28に御嵩を出た電車は犬山,新名古屋,新安城などを経由して19:48に豊橋に着いた。今日はここで泊まる。駅から徒歩7分の豊橋ビジネスホテルはトイレ・バスのない部屋があって1泊4000円と格安。実はインターネットで見つけた。そのうえ,予約はフリーダイヤルでできるという親切さ。

部屋は確かに狭かったけれど,もともと寝るだけだから充分。荷物を置いて近くの中華料理屋に行き,肉ニラ炒め定食で夕食とする。今日初めてまともな食事をした気分。いや,実際そうかもしれない。風呂はけっこう広く,他の客がいなかったので快適。

あ,そうそう。この部屋のテレビは無料で,有料チャンネルもなかったし,聖書もエロ本もなかった。そういうケースもあるということで,以下次号。


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