みならいの放浪記 1999 弥生・第1回
〜出発するまで〜

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今回の放浪の目的の第一は,3月14日に東京で友達が集まるからそこに参加することである。第二は,SWA@東大 さんの日記を読んでいて,うぉーっ,いきてー!である。この日記(というか旅行記)を読んでから先に進んでいただくことを希望する。あ,この回が終わってからでもいいけど。

参考文献:
SWAさんのトップページ http://www.swa.gr.jp/
その日記http://www.swa.gr.jp/diary/1999/tr-99w1.html

ところが,東京と福島と山形を結ぶのはなかなか難しい。それに,最近東京に行くときは利用している湖畔の友人宅は,今回諸般の事情により使えない。そこで,土曜の夜の「ムーンライトながら」で東京に行くところまではすんなりと決まった。

東京から福島・山形方面には適当な夜行列車がない。夜行バスはないわけではないが,あまり気が乗らない。そこで,新宿発新潟方面村上行き「ムーンライトえちご」を利用することに決めた。どうせ新潟に行くならと,第三の目的が決まった。

そうすると,新潟から山形に出るのが順路である。次の宿は山形市のユースホステルに決定。ここは昨年泊まったことがあって,非常に感じがよかったので再訪。

さて,第二の目的のうち,特に福島の方が問題である。SWA@東大さんは12キロほどの道のりを歩いたというが,できればそれは遠慮したい。確かにバスは非常に少ないが,その時間を紙に書き出して50分ほど眺めているうち(通学途中の電車の中での話)に,妙案が浮かんだのでそれで決定。そうすると,ちょうど朝山形を出て,福島で目的を果たした後,なんとか新潟に戻って「ムーンライトえちご」に乗れる。朝東京に降り立ち,東海道本線か中央本線,お望みならば飯田線かどっかを帰ってくればよろしい。

というわけで,まず行きの3月13日「ムーンライトながら」と3月14日「ムーンライトえちご」の指定券を買った。「ながら」はなぜか禁煙席が満席で,喫煙席になったがぜいたくをいうのはやめよう。

15日のユースホステルはのちほど予約すればよい。それから16日の「えちご」はそのうち買って……17日の夜遅くに大阪着,と。我ながら悪くない日程だ。

がしかーし。18日に臨時のゼミが入った。しかも,当番でなので急遽日程変更。検討の結果,16日夜に福島を出る夜行バスに乗れば17日の朝には大阪に戻れることが判明。夜行バスは青春18きっぷで乗れないから痛い出費だが,仕方ない。

んでもって,12日の夜はメールの整理に追われる。ふと,13日の予定を何も立てていないことに気付く。「ムーンライトながらに乗る」というだけで,それ以上のことを決めてなかった。今頃気付くとはなんとも間抜けな話である。

ムーンライトながらに乗る,というだけなら夕食,風呂のあと出かければよいだろう。しかし,それだけしか使わないのはもったいない。そこで,朝食を済ませたあと,玉子焼を食べるために明石まで出かけることにした。なんともまあぜいたくな話ではある。ただし,夕食はうちで食べると言ってしまったので,いったん家に戻ることになる。

まず,駅前の電話ボックスから近鉄バスに電話をかける。「できれば窓際がいいんですけど」と言ったら,「ええ,大丈夫ですよ」と言われて予約が終わる。もう発車5日前を過ぎているので,できるだけ早く乗車券を購入してほしいとのことだが,旅行代理店で買えば手数料がかかる。「近鉄の主な駅で買えば,手数料はかかりません」と聞いたので,手数料を払わずに済ませることに決めた。

とりあえず,素直に京橋まで出て,青春18きっぷで改札を入る。気分の問題で,環状線には乗らず快速宝塚行きに乗る。車内は空いていて簡単に座れる。尼崎では10分近く待って混んだ新快速に乗り,明石で降りると小雨である。けれど,傘を広げるのも面倒なので小走りでアーケードにかけこむ。

魚の棚商店街は,予想をはるかに超える混雑だった。いつも確かに混んでいるけれど,今日はケタ違いである。しばらく人の波に流されていると,理由がわかった。ちょうどイカナゴ漁の最盛期で,昼ごろ戻ってくる船から仕入れた新鮮なイカナゴを買おうと客が行列をなしているのである。私はそんなものを買っても仕方ないので,人をかきわけかきわけ進む。

さて,どこで玉子焼を食べるかがまた問題である。これまで何度も食べているが,絶対的にここ,といえる店がない。「本家」を掲げている店があるのだが,そこはいつも行列ができている。今回行ってみると,もともと高めだったその店がさらに値上げをしていたので,即座に却下。うろうろするが,決め手が見つからない。「あ,そこにも店がある」と思ってふらふらと近づいてみると,それは「明石焼」と書いたちょうちんを売っている店だった。

結局,帰り道で見つけた店に入ってみる。小さなその店に客はなく,注文してからおばちゃんがコンロに火をつけて焼いてくれた。生地とダシは非常によろしいのだが,肝心のタコがちょっと小ぶりで悲しい。

さて,用も果たしたし,帰ろう。近鉄の駅に行く必要があるのだが,あべの橋や鶴橋に行ったら必然的に帰りは京橋から京阪。そしたら260円が必要である。というわけで,近鉄京都駅に行くことにする。京都から帰ってくれば,定期があるから京阪に運賃を支払う必要はない。明石から新快速で京都まで突っ走る。

たぶん「駅事務所」のようなところで売ってくれるのだろうな,と思いながらキョロキョロしたが,それらしいものが見つからない。そこで,特急券売場の駅員に聞いたら,改札を入った中にあるという。もちろん改札でその旨を述べたら,入場料は取られなかった。

駅事務所で12740円の高速バス乗車券を買う。2万円出したら「細かくて申し訳ないんですが」とかなんとかいいながら駅員がおつりを持ってきた。千円札が7枚。「ええ,いいですよ。こちらこそお手数をおかけしまして」などと言いながら受け取る。がしかーし。

そのあと出てきたのは,百円玉1枚,五十円玉3枚と十円玉1枚。

事務所を辞し,改札を出て奈良線ホームを目指す。ところが,近くにあるのはJR倒壊の新幹線改札で,西日本の在来線改札は奈良線のホームをいったん乗り越えた向こう側にしかない。ぐるーっと遠回りをして10番線にたどりつくと,ちょうど奈良行きが出ていった。

ホームのベンチに座ってボーッと列車を眺め,20分後の奈良行きに乗って1駅,東福寺下車。これなら別払いなし,徒歩連絡なしで帰れるのである。どうせなら各駅停車淀屋橋行きに乗ってまたボーッと座っていようと思っていたら,奈良行きが着くと同時に出ていったのでまたベンチで15分ボーッとし,つぎの各駅停車に乗る。で,うちに帰って夕食をとり,風呂に入ってメールをチェックして,荷造りをもう一度確認して家を出たのである。以下次号。


《次回予告》

「ムーンライトながら」で熟睡をもくろむみならいの野望を阻止すべく送り込まれた刺客たち。次回,熟睡の邪魔と反動。たのしみにまっててね。


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